ウィーン・フィルハーモニー ウィーク イン ジャパン 2013

2013年はベルリン・フィルウィーン・フィル,コンセルトヘボウも相次いで来日し,
しかも来日時期が11月のほぼ同じ週になるという驚くべき事態が発生しました.
適当にチケットを買うとバッティングしてしまうので,カレンダーと演目を睨めっこしながら,チケットを買った覚えがあります.
さて,この3団体中トップバッターだったウィーン・フィル.今年はどうでしょうか.

ベートーヴェン: 交響曲第6番 へ長調 op.68 「田園」

いかにもウィーン・フィルらしいサウンド
角のないまろやかな響きで,あたかもオーケストラが1つの楽器のよう.
このレベルになると,もはやパート間のアンサンブルの出来云々などに言及するのも無意味な気がする.
ただ,意図的なものなのか分からないが,サウンドそのものがステージより前に出てこない.
前ではなく舞台上空の5メートルぐらいに,オケの音が渾然一体となって立ち上がる感じ.
ホールの隅々まで届く音では決して無かった.
これまでに行った公演でもそのような傾向にあって,今回だけという訳ではなさそうだけど,
そういうサウンドを目指しているのだろうか.


さて,指揮者ティーレマンも見ていたのだけど,どうもオケを掌握している感じがしない.
少なくとも,この日の演奏はティーレマンじゃなきゃ出来ない演奏とは言えないと思う.
このオーケストラの良さでもあり弱点でもあるのかもしれないけど,個性が強すぎて
この曲に対するイメージが既に出来上がってしまっているように感じる.
そうなると,もはや指揮者は曲の解釈に介入する余地はあまりなくなってしまうのかもしれない.

ベートーヴェン: 交響曲第7番 イ長調 op.92

こちらは出色の出来.
「田園」とは打って変わって,冒頭から張りつめた緊張感が漂う.
指揮者がステージに上がってから殆ど間を置かずにすぐに始まったのだが,終始テンションが高い状態.
テンポ設定や揺らぎも指揮者と一体になって,上手くコントロールできている.
ところどころで,まるでオケの音が飛び跳ねるような錯覚に陥るほどの軽やかなサウンド
やればできるじゃないか...このレベルの演奏が常にできれば素晴らしいのだが.


唯一,残念に感じたのが,木管が少し不安定だったところ.
奏者もどうにも吹きづらそうな雰囲気を醸し出していて,気持ち良さそうに吹けてない.
田園でもそうだったので,楽器の調子が悪かったのかな.


この日は皇太子様と森元首相が聴きに来ていました.
演奏前には元首相に次から次へと挨拶にセレブっぽい人たちが...何か別世界だなあ.