パリ・ギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団 来日公演 2013

去年の11月にいくつか演奏会に行ったのですが,時間が取れず放置してました...ほぼ3ヶ月遅れの更新になるとは.
さて,今回はオーケストラではなく吹奏楽.国内だと,海外の吹奏楽団を聴く機会は殆どありません.
CDなら海外盤を漁れば結構ありますが,生演奏は滅多にない.
そんな中,有名なギャルドが来日し,しかもディオニソスをやるとのことで,これは外せません.

ラヴェル: 道化師の朝の歌

ラヴェルの持つ軽やかでリズミカルな感じがよく出ています.
低音パートが鳴らしても全然重さがありません.
普通はハーモニーを重厚に組み立てがちですが,アプローチが違うのかそれでも全く貧相にならず.
奏者一人ひとりが上手なせいもあるかも.
ただ,ホールがまだ暖まってなかったのか,聞かせどころで響きが少し薄くなってしまったのが少し残念.

シュミット: ディオニソスの祭 op.62

個人的にはこの日一番の出来.
難曲なのにソロがブレない.細かいミスは挙げればいくつかあるけれど,安心して聴けるレベル.
終盤のパッセージがキツいところもきっちり吹けててスゴイ.
他に特徴的だと感じたのが,主題をトゥッティで鳴らすところでも力まず流してしまうところ.
日本のバンドだと「ここだ!!」とばかりにホールいっぱい鳴らしたりするので,身構えていたらあっさり...
言い換えると,酒の神がフラフラ〜っと酔っぱらってるような演奏,とでも言いましょうか.

デュカス: 魔法使いの弟子

pからmf辺りまでの細やかなアンサンブルが素晴らしいですね.
テンポが揺れてコントロールが難しいところも指揮者によくついていっています.
指揮者のブーランジェさん,ノリノリで少し暴走気味なのでは.
あえて一言言うなら,終盤に向けた盛り上げでカタルシスがあまり感じられなかったところが惜しい.

トマジ: トランペット協奏曲

トランペットソロは,エリック・オービエさん.
トランペットのソリストは詳しくないので,お名前は聞いたことありませんでしたが,好演でした.
音色が柔らかめだが,決してモワッとぼやけた音でもない.何とも絶妙なさじ加減.
また,奏者に挑戦的な曲なのか,全体的にハイトーンが多いのにも関わらず,余裕を残して吹いていました.
ミスらしいミスもなく,テクニックも確かです.
ミュートを3つ(?)使い分けて,素早く音色を変えるのもお手のもの.
トランペットのことなら何でもできるぜ,ってオーラが出ていましたね.


一方,ギャルドの方はどうかと言うと,正直あまり印象に残ってないというか,
ソリストの邪魔をしないように徹した感があって,これといった主張は感じられませんでした.

ラヴェル: 亡き王女のためのパヴァーヌ

この曲だけ編成が大きく異なり,木管群にホルン,ユーフォ,コントラバスを足した編成.
乱暴に言えば,木管アンサンブルのような形態だったのですが...
ラヴェル的音楽の特徴でもある靄がかった雰囲気は出ていたのですが,あまりにモヤッとし過ぎで正直イマイチ.
細部の仕上げが足りていないのかもしれません.
ソロはもっと歌っていい.旋律でタメるとこは,よりタメてほしかった.

ラヴェル: バレエ音楽「ダフニスとクロエ」 第2組曲

「夜明け」の冒頭は驚きましたね.
クラリネットが超忙しいパッセージをものともせず,ふわりとした感触を残したまま粛々と進んでいく.
中盤以降はちょっと緊張感が保てない瞬間も感じましたが,難曲であることも踏まえれば仕方ないでしょう.


演奏会全体を通じて感じたのは,奏者個人のテクニックは確かなのですが,パートごとに音が分離して飛んでくる傾向にあって,
バンドが一体となって音が混ざり合うような時間がとても少ないな,という点でした.
意図的にそうしてるのかよく分かりませんが...日本のバンドとは音作りが違うのかもしれません.